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大阪の税理士 三輪厚二税理士事務所

8.会社の土地に会社が建物を建築するケース

 

(ケース)会社の土地を会社が活用


[会社が活用]
──────
[会社の土地]


<ポイント>


(法人税)
・建物賃貸収入は、会社の益金に算入される。
・家族が、その会社の業務をする場合は、その業務に見合う対価を
給与として支払うことができる。給与は損金に算入される。
・業務に見合う額を超えて支給する給与は、損金不算入となる。
・役員である家族に支給する賞与などの臨時的な給与は、損金不算
入となる。
・建物の建築資金を個人から借り入れた場合、会社は個人に利息を
支払わなくても税務上は問題にならない。


(キャッシュフロー)
・キャッシュは会社に一旦入るが、家族に給与を支給する場合は、
家族にキャッシュが入る。


(相続税)
・会社の株式は、相続財産となる。
・会社に建物資金を個人が貸し付ける場合は、貸付金が相続財産と
なるが、資本金とする場合は株式が相続財産となる。
・株式を計算(純資産価額)する場合の土地及び建物の評価は、取得
後3年間は通常の取引価額で評価されるが、3年を超えると相続税
評価額となる。(3年経つと株式の評価が下がる)


■税務上の注意点


(1)法人税関係


@このケースで税務上問題になりやすいのは、家族に対して支給する給与ですが、それについては、3の自分の土地に同族会社が建物を建築するケースの給与課税関係で説明していますので、そちらを参照してください。


Aまた、同族会社が単なる不動産管理会社で、その管理対象となる不動産がごく近くにあるような場合において、会社が車を所有しているときは、その車は個人が使用するもの(会社にとって不要資産)として問題になることがありますので注意してください。

(2)相続税関係


建物の建築資金を個人が会社に貸す場合は、単純に貸すのか、または増資するのかによって、相続の対象となる財産及び評価が違ってきます。


■会社の株式の評価


同族関係者が所有する取引相場のない会社の株式の価額は、次の類似業種比準方式又は純資産価額方式で評価します。このどちらの方式を用いるかは、その株式の発行会社の規模(総資産価額、従業員数、取引金額を基準に大会社、中会社、小会社の区分をします)に応じて定められています。

@類似業種比準方式とは
類似業種比準方式とは、上場している類似業種の平均株価を基にして、1株あたりの配当金額、年利益金額及び純資産価額の3つの要素を会社と類似業種と比準して計算する方法で、次の算式により計算しま

A:類似業種の株価
B:類似業種の1株当たりの配当金額
C:類似業種の1株当たりの年利益金額
D:類似業種の1株当たりの純資産価額
b:評価会社の直前期末における1株当たりの配当金額
c:評価会社の直前期末以前1年間における1株当たりの年利益金額
d:評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額

A純資産価額方式とは
純資産価額方式とは、課税時期に会社を清算したらいくらになるかという考え方に基づいて株式を評価する方法で、課税時期における資産(相続税評価額)から負債(相続税評価額)及び、評価差額に対する法人税額相当額を控除して評価額を求めます。
具体的な算式は、次のとおりです。


1株当たりの=相続税評価額により−相続税評価額により−評価差額に対す
純資産価額  (計算した総資産価額 計算した負債の額  る法人税相当額)
÷課税時期における発行済株式数          (注)

(注)評価差額に対す=(相続税評価額に−帳簿価額によ)×42%
る法人税相当額  よる純資産価額 る純資産価額



相続税評価額による純資産価額D=@−B
帳簿価額による純資産価額E=A−C
評価差額に対する法人税相当額F=(D−E)×42%


B評価方式の適用区分
大会社・・・類似業種比準方式(純資産価額方式でも可)
中会社・・・次の算式の類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式
類似業種比準価額と
{純資産価額のいずれ×Lの割合}+{純資産価額×(1−Lの割合)}
か低い方

※Lの割合は、中会社を更に中会社の大・中・小に細分(上記の会社規模の基準と同じ基準で判定します)し、中会社の大は0.90、中会社の中は0.75、中会社の小は0.60と定められています。
小会社・・・純資産価額方式(類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式でも可)


C株式評価上の注意点
不動産の有効活用とこれらの株式の評価方法との関係は、次のようになっています。

イ.類似業種比準方式
類似業種比準方式は、配当金額、利益、純資産価額(内部留保)の3つを基準として株式を評価しますから、基本的には、不動産の有効活用によって、会社の利益が上がれば株価は上がり、利益が下がれば株価は下がることになります。活用にかかる不動産の価額とこの方式のよる株価は直接関係しません。

ロ.純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の純資産価額(資産から負債を控除した価額)を基準として株式を評価しますから、不動産の価額が直接、株価に反映することとなります。場合によっては、設例のように株価が大きく下がることもありますが、株価を引き下げる目的だけで有効活用を実行することは望ましくありません。あくまでも、収支が合うことが大切です。なお、会社が取得した土地(借地権を含みます)や建物は、取得後3年間は通常の取得価額(いわゆる時価)で評価し、3年経過後から通常の評価をすることとなっていますので、この点、注意してください。
(例)
イ.活用前

純資産価額=4億円−3億円−(4億円−3億円)×42%=5,800万円

ロ.活用後
土地に2億円の建物を建てて賃貸した場合
・建物の建築費            2億円
・建物の相続税評価額(貸家評価) 7000万円
・土地の評価             1億4,400万円
(貸家建付地評価)

純資産価額=2億1,400万円−3億円<0? ∴0

土地特定

■建築資金を本人が会社へ貸し付ける場合の相続税の評価


会社の建物建築資金を、個人が会社へ貸し付けた場合は、その貸付金が相続財産となります。貸付金は、その貸付金の金額で評価しますので、相続税の評価は現金を持っている場合と同じになります。

■建築資金を本人が会社へ増資する場合の相続税の評価


個人が、会社の建物建築資金を資本金として入れた場合は、会社の株式が相続財産となります。不動産活用することによって会社の株式の評価が下がれば、相続効果が得られます。

■土地、建物を有する会社の株式を取得する場合の相続税の評価


個人が、不動産を保有する会社を会社ごと購入した場合(不動産M&A)は、その会社の株式が相続財産となります。この場合には、その会社の株式の相続税評価額が、株式の取得価額より低ければ、その分だけ相続財産は圧縮されることとなります。

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