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大阪の税理士 三輪厚二税理士事務所

2.建物を建築して活用するケース

 

1.自分の土地に自分が建物を建築するケース

(ケース)自分の土地を自分が活用



[自分が活用]
──────
[自分の土地]

<ポイント>


(所得税)
・この場合の所得は、不動産所得となる。
・赤字は、他の所得と通算できる。ただし、赤字のうちに土地に係
る借入金利子がある場合は、その利子相当額は他の所得とは通算
できない。
・同族会社に一括貸しする場合には、賃料に注意が必要である。

(キャッシュフロー)
・キャッシュは自分に入る。
・手元には、次の算式で計算するキャッシュが残る。
(不動産収入−必要経費)+減価償却費−借入金の返済元本
・事業収支をよく考える必要がある。


(相続税)
・自分の土地の上に自分の建物(マンションやテナントビルなどの
貸家)を建てると、土地の評価は貸家建付地評価となり、おおむ
ね2〜3割下がる。
貸家建付地の評価=自用地価額×(1−借地権割合×借家権割合
×賃貸割合)
・建物の評価は、賃貸の用に供せば、貸家評価となり建築費のおお
むね4割程度になり、自用に供する場合はおおむね6割評価となる。


■税務上の注意点


(1)所得税関係


@この場合の所得は不動産所得になりますが、その場合の注意点は、2.
駐車場として活用するケースの1.自分の土地を自分が活用するケースを
参照ください。

A建物を同族会社に一括貸しをする場合には、その賃料をいくらにする
かが問題となります。


(2)相続税関係


このケースの場合、建物を第三者に賃貸するか、一定の要件を満たす同
族会社に賃貸するかによって、小規模宅地等の特例の取扱いが変わってきます。


■自分で活用する場合の所得税の取扱い


(1)家族に給与を支払う場合の所得税の取り扱い


不動産事業を営む個人が、その家族に給与を支給する場合は、その家族が生計を一にしているかどうかで次のように扱われます。


@生計を一にしている場合


生計を一にする親族に対する給与は、その事業者が青色申告者か白色申告者かによって次のように取り扱われます。


イ.青色申告者の場合
青色申告者が青色事業専従者に給与を支給する場合には、その支給方法及び支給金額の範囲を記載した青色専従者給与に関する届出書を所轄税務署に提出しなければなりません。そして、そこに記載した金額の範囲内で支給された給与の額のうち、その労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度からみてその労務の対価として相当であると認められる金額は必要経費として算入することができます。
この場合の青色事業専従者とは、次のいずれにも該当する人をいいます。

ロ.白色申告者の場合
白色申告者の場合、事業専従者に対して給与を支給してもその金額は必要経費に算入できませんが、次の金額のうちいずれか低い金額の事業専従者控除が必要経費とみなされることとされています。なお、この適用を受ける場合は、原則として、確定申告書にその適用を受ける旨及び事業専従者に関する事項を記載しなければなりません。

この場合の事業専従者とは、次のいずれにも該当する人をいいます。


ハ.(青色)事業専従者の取扱い
(青色)事業者の必要経費に算入された(青色)事業専従者給与の金額は、その(青色)事業専従者の給与所得の収入金額となります。

ニ.配偶者控除との関係
(青色)事業専従者に該当する人は、給与の額にかかわらず、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除などの適用対象となりません。


A生計が別の場合
事業者と生計を別にする親族に対して支給する給与は、その支給額が労務の対価として適正であれば、その全額が必要経費に算入できます。


(2)不動産所得が赤字となる場合


不動産活用をしたら、不動産所得が赤字になったという場合がありますが、この場合に、その赤字のうちに土地等を取得するために要した借入金の利子に相当する部分の金額があるときは、その負債の利子に相当する部分の金額は、生じなかったものとみなされ、他の所得の黒字の金額と損益通算することができないとされていますので注意してください。この場合の損益通算の対象とならない金額とは、次の区分に応じて、それぞれ次の金額とされています。

なお、この取扱いは、他の所得とは損益通算ができないということですから、他に黒字の不動産所得があれば、その不動産所得と損益通算することは認められます。また、この対象となる借入金の利子は、土地等を取得するために要した利子ですから、建物の取得に要した借入金の利子には適用されません。

(3)同族会社に一括貸しする場合


このケースで賃貸物件を建てた場合には、よく同族会社を介して賃貸に供するということが行われます。これは、同族会社に所得の一部を移転(同族会社から家族に給与を支払えば家族に所得の移転が図れる)して、個人の所得税の負担を軽くしようとするのが狙いですが、この場合には、同族会社に対する賃貸料をいくらにするかが問題になります。所得税では、原則として、実際の収入に対して課税されることになっていますので、個人への賃料を少なくしても問題にならないのではとも考えられますが、収入していない部分についても所得とするとした最高裁の判決もありますので注意して決めなければなりません。

(4)同族会社に不動産管理を任せる場合


また、同様の目的で、建物の管理を同族会社に任せるということも、このケースではよく行われますが、こちらもその不動産管理料の額をめぐって税務当局とよくトラブルになりますので注意してください。不動産管理料は、過去の判例から5%程度がよいとか10%から12%でも認められるということがいわれますが、基本的には個々の建物の規模や地域性、管理業務の内容等から総合的に判断するものですから、率だけで判断するのは避けるべきでしょう。(3)のケースも(4)のケースも事実認定を伴う事ですが、第三者に委託したらいくらかということで判断すれば、おおよその金額は見えてくるものと思います。


■相続税の効果


(1)土地の評価


@貸家、テナントとする場合
このケースの土地は貸家建付地として、次の算式で求めた価額によって評価します。





※賃貸されている各独立部分には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものは含めることができます。
(例)
・その土地の自用地価額  100万円
・借地権割合        70%
・借家権割合        30%
・賃貸割合        100%
貸家建付地の価額=100万円×(1−0.7×0.3×1.0)=79万円


A自用にする場合
建物を自用とする場合の土地の価額は、その土地の自用地としての価額によって評価します。
土地の価額=その土地の自用地価額

(2)建物の評価


@貸家、テナントとする場合
建物を貸家に供する場合の建物の価額は、次の算式によって求めた価額によって評価します。
その家屋の固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)
(例)
・その建物の建築費      1億8,000万円
・その建物の固定資産税評価額 1億円
・借家権割合         30%
・賃貸割合          100%
貸家の価額=1億円×(1−0.3×1.0)=7,000万円

A自用にする場合
建物を自用とする場合の建物の価額は、次の算式によって求めた価額によって評価します。
その家屋の固定資産税評価額×1.0


(3)建物となる駐車場の評価


シャッター付き駐車場などで建物に該当す建物の評価は、自用家屋として評価します。ただし、その駐車場がその賃賃貸借契約によって車以外の物を置いたり、店舗等などに改装して利用することができるなどとされているような場合は、その建物の賃借人は借家権の保護を受けることとなりますので、この場合は、貸家として評価することとなります。
自用家屋の価額=その建物の固定資産税評価額×1.0


(4)建築資金を借入れる場合、キャッシュで支払う場合

相続対策として建物を建てる場合、建築資金を借入れして払うのと自己資金で払うのとどちらが有利かという問題がありますが、これについては、次のようになっています。

@建物を建てることによる評価
建物を建てたときのその敷地の評価及びその建物の評価は、借入れしても自己資金でも同じです。

A借入れをするメリット、デメリット
自己資金で建物を建てた場合は、自分の現金が少なくなりますので、相続税の納税資金に影響を及ぼす場合があります。一方、借入金で建物を建てた場合には、自己資金が減らないというメリットはありますが、借入れによる金利の負担が発生しますので、不動産投資の収支が悪くなるというデメリットがあります。

■小規模宅地等の取扱い


小規模宅地等の特例は、建物を第三者に賃貸する場合、被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の事業用に供していた場合、特定同族会社の事業の用に供していた場合によって、次のように取り扱われます。


@建物を第三者に賃貸する場合
建物を第三者に賃貸する場合は、その建物の敷地は、事業用宅地となり、その宅地のうち200uまでの部分の評価額が、50%減額されます。


A被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の事業用に供していた場合
イ.被相続人の事業の用に供していた場合
相続開始の直前において被相続人の事業(賃貸業は除きます)の用に供されていた宅地等を次の要件のすべてに該当する被相続人の親族が取得した場合は、特定事業用宅地として、その宅地のうち400uまでの部分の評価額が、80%減額されます。

イ.その宅地上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに承継している相続人がいること
ロ.相続税の申告期限までその事業を営んでいること
ハ.その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること


ロ.被相続人と生計を一にする親族の事業用に供していた場合
相続開始の直前において被相続人と生計を一にする親族の事業(不動産貸付業を除きます)の用に供されていた宅地等を次の要件のすべてに該当する被相続人の親族が取得した場合は、特定事業用宅地として、その宅地のうち400uまでの部分の評価額が、80%減額されます。


イ.相続開始直前から相続税の申告期限までその宅地上で事業を営んでいること
ロ.その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること


B特定同族会社の事業の用に供していた場合
相続開始直前から相続税の申告期限まで次のイの要件に該当する会社の事業(不動産貸付業を除きます)の用に供されていた宅地等をロの要件のすべてに該当する被相続人の親族が取得した場合は、特定同族会社事業用宅地として、その宅地のうち400uまでの部分の評価額が、80%減額されます。

イ.持株要件
相続開始直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にする被相続人の親族がその会社の株式等を50%超有していること

ロ.取得者の要件
イ.相続税の申告期限において、イの会社の役員であること
ロ.その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること