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大阪の税理士 三輪厚二税理士事務所

3.自分の土地に同族会社が建物を建築するケース

 

(ケース)自分の土地を同族会社が活用


  [同族会社が活用]
 ─────────
   [自分の土地]

<ポイント>

(所得税)
・地代は徴収してもしなくても良い。ただし、通常の権利金、相当
の地代、無償返還の届出がないと会社に借地権の認定課税がされ
る。
・自分と同族会社間で無償返還の届出をしている場合及び通常の権
利金の授受がある場合は、世間並みの地代以下の地代を収受すれ
ばよい。無償でもよい。
・徴収した地代は、収入として計上しければならない。徴収しない
からといって特に課税されることはない。
・土地の更地価額(時価)の2分の1を超える権利金を受け取った場
合は、土地の譲渡があったものとして取り扱われる。

(法人税)
・建物賃貸収入は、会社の益金に算入される。地代の支払は、会社
の損金に算入される。
・家族が、その会社の業務をする場合は、その業務に見合う対価を
給与として支払うことができる。給与は損金に算入される。
・業務に見合う額を超えて支給する給与は、損金不算入となる。
・役員である家族に支給する賞与などの臨時的な給与は、損金不算
入となる。
・通常の権利金の授受がない、相当の地代を支払っていない、無償
返還の届出がない場合には権利金の認定課税がされる。

(キャッシュフロー)
・キャッシュは会社に一旦入るが、家族に給与を支給する場合は、
家族にキャッシュが入る。
(相続税)
・通常の権利金の授受がある場合、借地権の認定課税を受けた場合
は、その土地の評価は底地評価となる。
・相当の地代の授受がある場合、無償返還の届出をしている場合は、
土地の評価は自用地価額の80%評価となる。 差額の20%相当額は
会社の株式の計算(純資産価額)に反映される。

■税務上の注意点


(1)所得税関係


個人が会社に土地を貸し、会社がその上に建物を設ける場合は、会社から権利金を取る、権利金は取らずに相当の地代を取る、いずれも取らずに無償返還の届出をするのいずれかを選択しなければなりません。所得税の取り扱いは、その選択した方法によって、異なります。

(2)法人税関係


会社に対して土地を賃貸する場合には、原則として、権利金課税の問題が発生しますので注意してください。

(3)相続税関係


このケースでは、無償返還の届出を出しておけば、権利金も地代も収受する必要はなく、授受していないからといって課税されることはありませんが、地代を授受していないときは、小規模宅地等の特例が受けられませんので注意してください。


■建物を建てたときの課税関係


個人の土地に会社が建物を建てた場合は、権利金の授受があるのか、相当の地代の授受があるか、無償返還の届出を出しているかによって課税関係が違います。


@賃貸借の場合
イ.地主(自分)に対する課税(所得税)
2.本人の土地の上に家族の建物を建てた場合と同じですから、そちらを参照ください。

ロ.同族会社に対する課税(法人税)

イ.通常の権利金の授受がある場合
通常の権利金の授受がある場合には、同族会社には特に課税関係は生じません。

ロ.通常の権利金に満たない権利金の授受がある場合で相当の地代の支払いがある場合
通常の権利金に満たない権利金の授受があった場合でも、相当の地代の支払いがあるときは、同族会社には特に課税関係は生じません。この場合の相当の地代とは、次の算式で計算した金額です。
相当の地代=(土地の更地価額−支払った権利金の額−特別な経済的利益の額)×おおむね年6%
(年額)

※1この場合の土地の更地価額とは、その借地権の設定時におけるその土地の更地価額としての通常の取引価額をいいますが、課税上弊害のない場合には、通常の取引き価額に代えて、@公示価格から合理的に算定した価額、A相続税評価額、B相続税評価額の過去3年分の平均額によることもできます。
※2土地の更地価額を@又はA、Bとする場合には、支払った権利金の額は次の算式で計算した金額となります。



ハ.通常の権利金に満たない権利金の授受がある場合で相当の地代に満たない地代の授受がある場合
通常の権利金に満たない権利金の授受があり、かつ、相当の地代に満たない地代の支払いがあるときは、次の算式により計算した金額が、借地権の設定時に地主(自分)から同族会社へ贈与したものとして法人税が課税されます。
※1土地の更地価額は、通常の取引価額によります。公示価格や相続税評価額は使えません。
※2相当の地代の年額は、更地価額に対する相当の地代により、実際に収受している権利金があったとしても、これを控除しないで計算した金額となります。
※3算式により計算した金額が、通常収受すべき権利金の額を超えるときは、通常収受すべき権利金の額とします。

ニ.権利金の授受が全くない場合で相当の地代の授受がある場合
権利金の支払いがない場合は、通常、ハのように同族会社に対して借地権相当額の受贈益課税がありますが、権利金の支払いが全くない場合であっても、相当の地代の支払いがあるときは、同族会社に対しては課税関係は生じません。

ホ.権利金の授受が全くない場合で無償返還の届出がある場合
権利金の授受が全くない場合や相当の地代の支払いのない場合には、通常、ハのように同族会社に対して借地権相当額の受贈益課税がありますが、権利金の支払いが全くなく、かつ、相当の地代に満たない地代を支払っている場合であっても、その借地権の設定契約書において、将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、その旨を記載した無償返還の届出を、その同族会社の納税地の所轄税務署長に提出したときは、借地権課税はされません。

ヘ.相当の地代の支払いも無償返還の届出もない場合
相当の地代の支払いもなく、また無償返還の届出もしていない場合は、地主から借地人に対して借地権相当額の贈与があったものとして、受贈益課税が会社に対してなされます。

A使用貸借の場合
イ.地主(自分)に対する課税(所得税)
使用貸借である場合は、権利金の授受も地代の収受がありませんので、基本的に課税関係は生じません。


ロ.同族会社に対する課税(法人税)
税務上では、地主又は借地人のどちらか一方が法人である場合は、その取引きが使用貸借であっても、賃貸借と同様に取り扱われることとされていますので、@の取扱いに準じて課税関係を適用することとなります。

[無償返還の届出書]
[課税関係図]

B自分自身に課税関係が生じる場合、生じない場合
イ.課税関係が生じる場合
同族会社から権利金又は相当の地代を収受した場合は、次の課税関係(所得税)が生じます。



※権利金相当額が譲渡所得の収入金額となり、次の算式により計算した金額が取得費となります。


ロ.課税関係が生じない場合
同族会社から権利金を収受しない場合は、課税関係は発生しません。


C同族会社に課税関係が生じる場合、生じない場合
イ.課税関係が生じる場合
同族会社は、@権利金を全く支払わない場合、A通常の権利金に満たない権利金の支払いがある場合で、相当の地代に満たない地代の支払いがあるとき、B権利金の支払いが全くない場合で、相当の地代の支払いも無償返還の届出もない場合に課税関係(権利金相当額の受贈益課税)が発生します。

ロ.課税関係が生じない場合
同族会社が、@通常の権利金を支払う場合、A相当の地代を支払う場合、B無償返還の届出をしているときは、課税関係は発生しません。

D自分にも同族会社にも課税関係が生じない場合
自分にも同族会社にも課税関係が生じない場合は、無償返還の届出をしている場合です。それ以外はどちらかに何らかの課税関係が発生します。 


■給与課税関係


このケースでは、建物の収入を会社に入れ、家族に給与を支給するということがよく行われますが、家族を役員又は使用人として会社の業務に就かせ、給与を支給する場合には、次の点に注意してください。
@給与の額がその職務の対価として適正な額であること
高額であると認められる部分の金額は、損金に算入することができません。
A支給時期を毎月同じ日にすること
法人税では、役員に対する賞与は、損金に算入できないこととされています。したがって、役員に対する報酬を損金としたいときは、その報酬をたとえば、毎月同じ日に支給するなど規則的に継続して支給しなければなりません。臨時的に支給されるものは賞与として取り扱われます。


■相続時の取扱い


個人の土地に会社が建物を建てた場合の土地等の評価は、借地権課税と同じように、権利金の授受があるのか、地代はいくらか、無償返還の届出はしているかなどによって異なってきます。

@賃貸借の場合
イ.自分の土地の評価


イ.通常の権利金を授受している場合
通常の権利金の授受がある場合の土地の価額は、貸宅地として次の算式によって求めた金額によって評価します。

土地の価額=自用地価額×(1−借地権割合)

ロ.権利金の授受がない場合で相当の地代を収受している場合
相当の地代を収受している場合のその土地の価額は、その土地の自用地としての価額の80%相当額によって評価します。相当の地代を支払っている場合は、本来、借地権の価額はゼロなのですが、貸宅地は使用制限があること、また、借地権の慣行のない地域においても20%の借地権部分を控除して評価していることから、このような扱いとされています。

土地の価額=自用地価額×80%

ハ.一部権利金の授受がある場合で相当の地代を収受している場合
一部権利金の授受がある場合の土地の価額は、その土地の自用地としての価額から、次の算式によって求めた借地権の価額を控除した金額によって評価します。ただし、その求めた価額が、自用地価額の80%相当額を超えるときは、自用地価額の80%相当額となります。この場合において、自用地としての価額から控除された20%相当の金額及び自用地としての価額の80%を超える金額は、同族会社の株式又は出資の評価上、純資産価額に算入して計算することとなります。これは、土地の価額が個人法人を通じて100%となることが課税の公平上適当と考えられるからです。


ニ.相当の地代に満たない地代を収受している場合
収受している地代の額が通常の地代を超え、相当の地代に満たない場合の土地の価額は、上記ハと同様です。
ホ.無償返還の届出をしている場合
無償返還の届出書が提出されている土地の価額は、その土地の自用地としての価額の80%相当額で評価します。無償返還の届出がされている借地権の価額はゼロとして評価されますので、本来、貸宅地の評価は自用地としてのとして評価されるべきですが、前記ロと同様の理由から、20%相当額を控除して評価することとされています。
土地の価額=自用地価額×80%

[課税関係図]


■相続税の効果


(1)土地の評価


@通常の権利金の授受がある、会社に借地権利金の認定課税がされた場合
この場合には、会社に借地権があるとされるので、その土地の価額は自用地価額から借地権の価額を控除した価額によって評価することとなります。


A相当の地代の支払がある、無償返還の届出がある場合の土地の評価
土地の貸借のついて、相当の地代の支払がある、無償返還の届出がある場合は、会社に借地権はないものとして取り扱われます。したがって、本来であれば、その土地の価額は、その土地の自用地としての価額により評価することとなるのですが、建物がある場合は、利用制限があることや借地権の取引慣行のない地域においても20%の借地権部分を控除して評価していることなどから自用地価額の100分の80に相当する金額で評価することになります。なお、この場合には、差額の20%相当額は、その同族会社の株式又は出資の評価上、純資産価額に算入して計算することとなります。


(2)小規模宅地等の特例の取扱い


小規模宅地等の特例の取り扱いは、同族会社がその建物を不動産賃貸業以外の事業の用に供しているか、それ以外の用に供しているかによって次のように取り扱われます。ただし、同族会社が地代(固定資産税相当額では認められません)を払っていないときは適用はありません。

@特定同族会社の事業の用に供していた場合
同族会社が不動産貸付業以外の事業をその宅地で行っている場合で、次のイ及びロの要件のすべてに該当するときは、特定同族会社事業用宅地として、その宅地のうち400uまでの部分の評価額が、80%減額されます。


イ.持株要件
相続開始直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にする被相続人の親族がその会社の株式等を50%超保有していること

ロ.取得者の要件
イ.相続税の申告期限において、イの会社の役員であること
ロ.その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること

A同族会社に賃貸していた場合

@に該当せず、同族会社に賃貸していたという場合は、事業用宅地として、その宅地のうち200uまでの部分について、評価額が50%減額されます。