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大阪の税理士 三輪厚二税理士事務所

2.土地建物の譲渡課税

 

1.土地だけを譲渡する場合


土地を譲渡した場合は、その土地が長期所有土地であれば長期譲渡所得に、短期所有土地であれば短期譲渡所得となり、次のような課税になります。


(1)長期譲渡となる場合


長期譲渡所得に該当する場合は、次のような課税になります。
イ.課税長期譲渡所得=譲渡収入−(取得費+譲渡費用)
ロ.長期譲渡所得=イ×20%(国税15%、地方税5%)
に対する課税
(例)昭和45年に取得した土地を平成16年に売却
・譲渡価額   5,000万円
・取得費    1,000万円
・譲渡費用    200万円
課税長期譲渡所得=5,000万円−(1,000万円+200万円)=3,800万円
所得税、住民税額=3,800万円×20%=760万円


(2)短期譲渡所得となる場合


短期譲渡所得に該当する場合は、次のような課税になります。
イ.課税短期譲渡所得=譲渡収入−(取得費+譲渡費用)
ロ.短期譲渡所得=イ×36%(国税30%、地方税6%)
に対する課税
(例)平成13年に取得した土地を平成16年に売却
・譲渡価額   5,000万円
・取得費    4,500万円
・譲渡費用    200万円
課税短期譲渡所得=5,000万円−(4,500万円+200万円)=300万円
所得税、住民税額=300万円×36%=108万円

2.取得価額が不明のとき(概算取得費)


土地建物等の取得がかなり以前で、取得価額がわからない場合の取得費及び昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の取得費は、その土地建物等の譲渡収入金額の5%に相当する金額とすることができます。


取得費=譲渡収入金額×5%
もちろん、実際の取得費がその譲渡収入金額の5%相当額より多いことが証明されるときは、その金額を取得費とすることができます。
なお、この概算取得費の特例は、原則として昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等を譲渡した場合に適用されるのですが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費の計算についても適用することができることにされています。

※建物等について概算取得費の特例を適用するときは、償却費相当額を控除する必要はありません。
(例)昭和25年に取得した土地を平成16年に売却
・譲渡価額   5,000万円
・取得費不明  5,000万円×5%=250万円
・譲渡費用    200万円
課税長期譲渡所得=5,000万円−(250万円+200万円)=4,550万円
所得税、住民税額=4,550万円×20%=910万円

3.相続した土地等を譲渡する場合


(1)特例の概要


相続又は遺贈(死因贈与を含みます。以下「相続等」といいます。)により財産を取得した個人が、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された資産を、その相続等に係る被相続人の死亡の日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に譲渡した場合には、その譲渡所得の計算については、相続税額のうち一定の金額を、その譲渡した資産の取得費に加算して、その資産の譲渡所得金額の計算上控除することができるとされています。

※1相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産で相続税の課税価格に加算されたものも対象となります。
※2限定承認をした相続又は包括遺贈により取得した財産には、この特例の適用はありません。
※3ここでいう譲渡には、借地権の設定に伴う権利金の額が、その土地の価額の2分の1を超えるため、譲渡所得とされる場合の、不動産の貸付けも含まれます。

 

(2)取得費に加算される金額


取得費に加算する金額は、譲渡した資産が土地等かそれ以外かに応じて、それぞれ、次のように取り扱われます。
@譲渡した資産が土地等の場合


(例)昭和50年に被相続人が取得した土地を平成16年に売却
・譲渡価額   5,000万円
・取得費不明  5,000万円×5%=250万円
・譲渡費用    200万円
・相続税額   1,500万円
・課税価格   1  億円
・相続した土地 4,000万円等の合計額
取得費に加算される金額=1,500万円×4,000万円÷1億円=600万円
課税長期譲渡所得=5,000万円−(250万円+200万円+600万円)=3,950万円
所得税、住民税額=3,950万円×20%=790万円
※取得時期は被相続人が取得した日となります(P 参照してください)。

A譲渡した資産が土地等以外の場合





(3)申告手続


この特例の適用を受けるためには、資産を譲渡した日の属する年分の確定申告書に、その適用を受けようとする旨を記載するとともに、次に掲げる書類を添付して、その提出期限内に住所地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
@譲渡所得の内訳書(計算明細書)
A相続の開始があった日及び相続税の申告書を提出した日、取得費に加算する金額の計算等の明細書、相続税額、課税価格の資産ごとの明細

4.土地、建物を一括譲渡する場合


譲渡所得を計算する場合には、土地は土地、建物は建物でそれぞれ計算しなければなりません。
そこで、これらを一括譲渡した場合には、それぞれの土地、建物についての譲渡収入金額及び取得価額を求めることになりますが、これについては、次のように取り扱われます。

(1)譲渡収入金額の算出方法


土地、建物を一括譲渡した場合の譲渡対価を土地の価額と建物の価額に区分する方法には、次のような方法がありますが、必ずしもこの方法による必要はなく、他に合理的な区分がある場合には、それによることができます。


@建物控除方式  
建物の適正な価額Aを決定し、土地の価額は譲渡対価からAを控除して求める方式。


A土地控除方式
土地の適正な価額Aを決定し、建物の価額は譲渡対価からAを控除して求める方式。この場合は、建物の価額が譲渡対価として相当であると認められる場合に限られる。

B比例配分方式
譲渡対価を土地と建物の時価で按分する方式。

C不動産鑑定方式
不動産鑑定士の評価に基づいて土地、建物の価額を按分する方法

(2)取得価額の算出方法


一括取得した土地・建物を譲渡した場合の取得価額の計算
過去に一括取得した土地・建物を譲渡した場合の取得価額の区分計算は、通常次の3つの方法のいずれかによります。

なお上記ハの場合においては、建物の建築年と木造、鉄骨造等の構造別に1u当たりの標準的な建築価額を定めた「建物の標準的な建築価額」表を目安にして建物の取得価額を算定することが認められます。

[建物の標準的な建築価額表]

※1「建物の標準的な建築価額」表による場合は、譲渡建物の建築年に対応する同表の建築単価(年別・構造別)にその建物の床面積を乗じた金額をその建物の取得価額とします。なお、建物がマンション等である場合の床面積は、その者が有する専有部分の床面積によっても差し支えありません。
※2中古の建物を取得している場合には、その建物が建築された年に対応する「建物の標準的な建築価額」表の単価に床面積を乗じて求めた建築価額を基に、その建築時から取得時までの経過年数に応じた償却費相当額を控除した残額を取得価額として計算して差し支えありません。  

5.みなし譲渡とされる場合(借地権設定時)


個人である土地の所有者が土地を貸し付け、受け取った権利金がその土地の価額の2分の1を超える場合は、借地権の譲渡があったものとみなされ、所得税が課税されますが、この場合の取り扱いは、次のようになります。


(1)譲渡収入金額


受け取った権利金の額が譲渡所得の収入金額となります。なお、借地権の設定に際して、通常の場合よりも特に有利な条件で金銭の貸付けを受けるなどの経済的利益を受けた場合は、その経済的利益の額を加算します。
譲渡収入金額=権利金の額+経済的利益の額

(2)取得費の計算


みなし譲渡課税が行われる場合の借地権の取得費は、次のように計算します。


※その土地の底地価額が明らかでなく、かつ、その借地権等の設定により支払を受ける地代があるときは、その地代の年額の20倍に相当する金額とすることができます。

6.借地権を譲渡する場合


借地権者が、借地権を譲渡した場合には、土地を譲渡した場合と同じ取り扱いがされます。

(1)譲渡収入金額


個人借地人が借地権を譲渡した場合は、通常は分離課税の譲渡所得(棚卸資産の譲渡である場合は事業所得又は雑所得)となり、譲渡価額が譲渡収入金額となります。

(2)取得価額


取得価額には、次のようなものが含まれます。
@地主等に支払った権利金、借地権の購入代価又は立退料等の金額。
A土地の上に存する建物等を取得した場合におけるその建物等の購入代価のうち借地権の対価と認められる部分の金額。
B埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事等の整地又は土地の改良のために要した費用。
C借地契約の更新又は変更に当たり支出した費用。
D建物を増改築するに当たり、地主等に対して支出した費用。
E借地権を建物等とともに取得した場合において、その取得後おおむね1年以内にその建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であったことが明らかなときにおける建物等の取壊し損失の額(その建物等の取壊し時の帳簿価額と取壊し費用との合計額から廃材の処分による収益の額を控除した金額)。
F借地権の取得のために支払った仲介手数料等の金額。
G借地権の無償取得又は低廉取得があった場合において、借地権の時価とその実際に支払った権利金又は購入代価の額との差額に対して受贈益として法人税や所得税を課税された場合におけるその受贈益の金額。なお、個人が個人から贈与を受けたものとして贈与税を課税された場合におけるその受贈益に相当する金額は取得費に加算することはできません。
H長期保有の借地権の取得費の計算については、概算取得費控除の特例が設けられており、実際の取得費がその借地権の収入金額の5%よりも少ないときは、収入金額の5%相当額とされる簡便計算法があります。

 

7.相当の地代を支払っている土地を譲渡する場合


(1)相当の地代を固定している場合


相当の地代を固定方式としている場合、又は中途半端に値上げをしている場合には、土地の価額の上昇により地代率が相対的に低下し、自然発生借地権が借地人に帰属していくと考えられています。
このような状態にある土地を譲渡した場合には、次のような課税関係にな
ります。


@支払っている地代が通常の地代を超える場合
その支払っている地代の額が通常の地代の額に相当する金額となる以前において、譲渡が行われた場合は、借地権価額は次の算式で求めた金額となります。




※「本来あるべき相当の地代の年額」とは、その土地の価額(課税上弊害がないと認められる限り自用地としての価額の過去3年間における平均額)の年6パーセント相当額をいいます。実際に収受している権利金の額又は特別の経済的利益の額がある場合であっても、これらの金額がないものとして計算します。


A支払っている地代が通常の地代以下である場合
支払っている地代の額が通常の地代の額以下である場合における借地権価額は、その土地について通常取引される借地権の価額となります。
借地権価額=土地の更地価額×借地権割合

土地(底地)価額=土地の更地価額−借地権価額

(2)相当の地代を地価にスライドさせている場合


相当の地代をスライド方式としている場合は、借地権の価額は常にゼロとなりますから、この土地を譲渡した場合には、その土地は、更地価額(時価)により譲渡したものと考えられます。
借地権価額=ゼロ
土地(底地)価額=土地の更地価額
この場合において、譲渡価額が時価より著しく低い(時価の1/2未満)場合には、時価による譲渡があったものとして次のような課税関係が生じます。

イ.地主個人、買主個人の場合


ロ.地主個人、買主会社の場合


ハ.地主会社、買主個人の場合


ニ.地主会社、買主会社の場合


8.地主が借地権を取得し、その後その土地を譲渡する場合


借地権等の設定されている土地の所有者が、立退料等を支払い、借地権等を消滅させた後にその土地を譲渡した場合には、土地のうち借地権等の消滅時に取得したものとされる部分(以下「旧借地権部分」といいます。)及びその他の部分(以下「旧底地部分」といいます。)をそれぞれ譲渡したものとして取り扱われます。


(1)収入金額


この場合における旧借地権部分及び旧底地部分に係る収入金額は、それぞれ次に掲げる算式により計算した金額によります。


@旧借地権部分に係る収入金額


土地の譲渡対価の額  旧借地権等の消滅時の旧借地権等の価額
又は新たに設定した借×───────────────────
地権等の対価の額   旧借地権等の消滅時のその士地の更地価額

※「旧借地権等の消滅時の旧借地権等の価額」は、その借地権等の消滅につき対価の支払があった場合において、その対価の額が適正であると認められるときは、その対価の額(手数料その他の付随費用の額を含みません。)によることができます。

A旧底地部分に係る収入金額


土地の譲渡対価の額又は新たに − @の金額
設定した借地権等の対価の額
(例)
・立退料の額    2,000万円
・土地の更地価額  3,000万円
・譲渡価額     3,600万円
イ旧借地権部分に係る収入金額
  3,600万円 × 2,000万円
           ───── =2,400万円
            3,000万円
         
ロ旧底地部分に係る収入金額
  3,600万円−イ =1,200万円

  
(2)取得費


この場合の取得費は次により計算します。

@旧借地権部分の取得費


旧借地権等の消滅につき  当該土地のうち譲渡した部分の面積(B)
支払った対価の額(A)  ×──────────────────
当該土地の面積(C)




9.借地権者が底地を取得し、その後その土地を譲渡する場合


借地権等を有する者が、借地権等に係る底地を取得した後にその土地を譲渡した場合には、その土地のうちその取得した底地に相当する部分(以下「旧底地部分」といいます。)及びその他の部分(以下「旧借地権部分」といいます。)をそれぞれ譲渡したものとして取り扱われます。

(1)収入金額


この場合における旧底地部分及ぴ旧借地権部分に係る収入金額は、ぞれぞれ次に掲げる算式により計算した金額によります。


@旧底地部分に係る収入金額
土地の譲渡対価の   旧底地の取得時の旧底地の価額
額又は設定した借地× ─────────────────
権等の対価の額    旧底地の取得時のその土地の更地価額

※「旧底地の取得時の旧底地の価額」は、その底地の取得につき対価の支払があった場合において、その対価の額が適正であると認められるときは、その対価の額(手数料その他の付随費用の額を含みません。)によることができます。


A旧借地権部分に係る収入金額
土地の譲渡対価の額又は
設定した借地権等の対価の額 −@の金額
(例)
・底地の価額    1,000万円
・土地の更地価額  3,000万円
・譲渡価額     3,600万円

イ旧借地権部分に係る収入金額
3,600万円 
───── × 1,000万円 =1,200万円
3,000万円

ロ旧底地部分に係る収入金額


3,600万円−イ =2,400万円

(2)取得費


この場合の取得費は次により計算します。



10.個人と同族会社で譲渡する場合


個人と同族会社で土地等の譲渡をする場合は、それが適正な価額で取引されているときは問題ありません(通常の課税)が、譲渡対価と時価に差があるときは、次のような課税関係が生じます。

(1)売主が個人、買主が同族会社の場合

@売主個人に対する課税
イ.譲渡対価が時価以下の場合
譲渡対価が時価の2分の1未満であるときは、時価により譲渡があったものとみなされ、譲渡所得税が課税されるが、2分の1以上であるときは、その譲渡対価が譲渡収入金額となります。

ロ.譲渡対価が時価を超える場合
譲渡対価が時価を超える場合は、その超える部分は会社からの贈与となり、個人の一時所得となります(会社の役員又は使用人の場合は給与となります)。


A買主同族会社に対する課税
イ.譲渡対価<時価の場合
時価との差額は受贈益として認定されます。

ロ.譲渡対価>時価の場合
時価との差額は、寄付金となります(個人が会社の役員又は使用人の場合は給与となります)。

(2)売主が会社、買主が個人の場合

@売主会社に対する課税
イ.譲渡対価<時価の場合
時価との差額は益金に算入されます。また、個人に対して贈与したものとして、寄付金(個人が役員又は使用人の場合は給与)課税がされます。

ロ.譲渡対価>時価の場合
譲渡対価は益金に算入されます。


A買主個人に対する課税
イ.譲渡対価<時価の場合
時価との差額は会社からの贈与として、一時所得の課税対象となります(会社の役員又は使用人の場合は給与となります)。

ロ.譲渡対価>時価の場合
差額は個人から会社への寄付金となりますが、特に課税関係は生じません。

11.居住用財産を譲渡した場合(軽課税率)


(1)概要


譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超える自己の居住用財産(居
住用家屋やその敷地)を譲渡した場合には、その居住用財産の譲渡に係る課税長期譲渡所得に対して軽減税率が適用されます。
ただし、この軽減税率の適用には、@既に前年又は前々年において、この特例の適用を受けていないことA居住用財産の買換え(交換)の特例の適用を受けていないこと、その他一定の要件があり、これを満たさなければなりません。

 

(2)要件のポイント


@所有者が現に居住している家屋(店舗併用住宅などは、所有者が居住の用に使用している部分に限られます。)又はその家屋と一緒にその敷地(土地又は借地権)を譲渡する場合に適用がある。

A@の家屋又は敷地は、譲渡の年の1月1日において所有期間が10年を超えていなければ適用がない。

B現に居住している家屋が2以上ある場合は、そのうち主として居住している家屋を譲渡した場合にだけ適用がある。

C転勤などのため、家屋の所有者が一時的にそこに居住していない場合であっても、配偶者等が引き続きその建物に居住している場合には、適用がある。

D自分が居住していた家屋を空家や貸家にしている場合でも、所有者が居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合には適用がある。

E譲渡した居住用財産の譲受者が、配偶者や直系血族、自分と生計を一にしている特別の関係にある者、一定の同族会社である場合には、適用がない。

F家屋を曳き家して敷地だけを譲渡する場合又は家屋はそのままで敷地の一
部(例えば庭先)だけを譲渡する場合には、適用はない。

G9の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例と併用して適用することができる。

 

(3)譲渡所得及び税額の計算


課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は10%(住民税は別途4%)の税率により、6,000万円を超える部分は15%(住民税は別途5%)の税率により課税されます。

この特例を受ける場合の譲渡所得の計算は、次のようにします。
@長期譲渡所得の場合
収入金額−(取得費+譲渡費用)=長期譲渡所得の金額
長期譲渡所得の金額−特別控除額(3,000万円)=課税長期譲渡所得金額

A所得税、住民税額
イ. 課税長期譲渡所得が6,000万円以下の場合
課税長期譲渡所得×14%(国税10%、地方税4%)

ロ.課税長期譲渡所得が6,000万円を超える場合
課税長期譲渡所得×20%−360万円(国税15%、地方税5%)
※1この特例は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例が受けられる場合には、特別控除額を控除した後の譲渡所得金額に対して適用されます。
※2この特例は、所有期間が10年超であることを要していますので、譲渡所得は長期譲渡所得になります。

(4)申告手続


この特例の適用を受けるには、確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法31条の3」と記載するとともに,次の書類を添付しなければなりません。

@譲渡した居住用財産の登記簿謄本(抄本)又は閉鎖登記簿謄本(抄本)

A居住用財産を譲渡した日から2か月を経過した日後にその譲渡した財産の
所在地の市区町村長から交付を受けた譲渡者の住民票の写し

12.居住用財産を譲渡した場合(特別控除)


(1)概要


個人が、その居住の用に供している家屋を譲渡した場合、その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡(譲渡みなされる不動産の貸付けも含みます。以下同じ。)をした場合又は居住の用に供していた家屋又は土地等をこれらの家屋が居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合には、その譲渡所得の金額から3,000万円の特別控除を行うことができるとされています。
ただし、この特例は、既に前年又は前々年において、@この特別控除の適用を受けている場合又はA居住用財産の買換え(交換)の特例の適用を受けている場合には適用がありません。
なお、この特例は、店舗併用住宅であっても居住用部分については特別控除が認められ、また、資産の譲渡とみなされる借地権の設定の場合にも適用されます。

(2)要件のポイント


@現に居住している家屋(店舗併用住宅などは、所有者が居住の用に使用している部分に限られます。)又はその家屋と一緒にその敷地(土地又は借地権)を譲渡する場合に適用がある。

A現に居住している家屋が2以上ある場合は、そのうち主として居住している家屋を譲渡した場合にだけ適用がある。

B転勤などのため、家屋の所有者が一時的にそこに居住していない場合であっても、配偶者等が引き続きその建物に居住している場合には、適用がある。

C自分が居住していた家屋を空家や貸家にしている場合でも、所有者が居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合には適用がある。

Dこの特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる家屋には、適用がない。

E居住用家屋の改築期間中や新築期間中だけの仮住いである家屋や別荘などには適用できない。

F譲渡した居住用財産の譲受者が、配偶者や直系血族、自分と生計を一にしている特別の関係にある者、一定の同族会社である場合には、適用がない。

G家屋を曳き家して敷地だけを譲渡する場合又は家屋はそのままで敷地の一
部(例えば庭先)だけを譲渡する場合には、適用はない。

 

(3)譲渡所得の計算


この特例を受ける場合の譲渡所得の計算は、次のようにします。

@長期譲渡所得の場合
収入金額−(取得費+譲渡費用)=長期譲渡所得の金額
長期譲渡所得の金額−特別控除額(3,000万円)=課税長期譲渡所得金額

A短期譲渡所得の場合
収入金額−(取得費+譲渡費用)=短期譲渡所得の金額
短期譲渡所得の金額−特別控除額(3,000万円)=課税短期譲渡所得金額
※1居住用財産の譲渡益が3,000万円未満の場合は、その金額が限度となります。

※2居住用財産の譲渡所得のなかに短期譲渡所得と長期譲渡所得とがある場合
の3,000万円の特別控除額は、まず短期譲渡所得から控除します。

 

(4)申告手続


居住用財産の3,000万円控除の特例の適用を受ける場合には、譲渡した年分の
確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法35条」と記載するとともに、次の書類を添付しなければなりません。


@譲渡所得計算明細書 

A居住用財産を譲渡した日から2か月を経過した日後にその譲渡した財産の所在地の市区町村長から交付を受けた譲渡者の住民票の写し
(その譲渡後他の市区町村に転出した人は,転出前の市区町村長から交付を受けた除票住民票の写し)を添付しなければなりません。
※3,000万円の特別控除額を控除した結果、課税長期(短期)譲渡所得金額がOに
なる場合であっても、この特例の適用を受けるためには、必ず確定申告書を提出しなければなりません。

 

13.固定資産の交換をする場合


資産を交換した場合には、原則として、取得した資産の価額により譲渡があったものとして所得税が課税されますが、その交換が一定の要件を満たすときには、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べる特例が設けられています。
なお、この特例は、交換により譲渡した資産の取得時期と取得費を交換によって取得した資産が引き継ぐことになります。


(1)適用要件


この特例の適用を受けるためには、次の要件のすべてに該当ことが必要です。

@交換譲渡資産も交換取得資産もいずれも次に掲げる固定資産で、かつ、種類を同じくする資産の交換であること。

イ.土地等
ロ.建物(これに附属する設備や構築物を含みます。)
ハ.機械及び装置
ニ.船舶
ホ.鉱業権
※同種の資産の交換とは、例えば次のようなものをいいますから、土地と建物というような交換には、この特例の適用は認められません。

イ.土地と土地の交換
ロ.土地と借地権の交換
ハ.農地と耕作権の交換
ニ.地上権である借地権と賃借権である借地権の交換
ホ.建物と建物の交換
ヘ.建物と建物やその附属設備の交換
ト.建物と建物やその附属構築物の交換
チ.機械と機械の交換
リ.装置と装置の交換
ヌ.機械と装置の交換


A交換による譲渡資産も交換による取得資産も、それぞれの所有者が1年以上所有していたものであり、しかも、交換の相手方が持っていた資産は交換の目的で取得したものでないこと。

B交換で取得した資産を、譲渡した資産の譲渡直前の用途に供すること。
交換取得資産を交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同じ用途に供したかどうかは、その資産の種類に応じ、おおむね次に掲げる区分により判定することとされています。
イ.土地にあっては、宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他の区分
ロ.建物にあっては、居住の用、店舗又は事務所の用、工場の用、倉庫の用、その他の用の区分


C交換譲渡資産の価額と交換取得資産の価額の差額がそのいずれか多い方の価額の20%以内であること。

(2)借地権等の設定の対価として土地等を取得した場合


自己の所有する土地に借地権等の設定(その設定による所得が譲渡所得とされる場合に限ります)をし、その設定の対価として相手方から土地等を取得した場合には土地の交換があったものとして、この特例の適用を受けることができます。


(3)二以上の種類の資産を交換した場合


二以上の種類の固定資産を同時に交換した場合、例えば、土地及び建物と土地及び建物とを交換した場合には、土地は土地、建物は建物とそれぞれ交換したものとされます。
この場合において、これらの資産は全体としては等価であるが、土地と土地、建物と建物との価額がそれぞれ異なっているときは、それぞれその価額の差額は交換差金等として取り扱われます。

(4)資産の一部分を交換として他の部分を売買とした場合の交換の特例の適用


一の資産について、その一部分については交換とし、他の部分については売買としているときは、その他の部分を含めて交換があったものとされ、その売買
代金は交換差金等として取り扱われます。


(5)取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供する時期


固定資産を交換した場合において、取得資産をその交換の日の属する年分の確定申告書の提出期限までに譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供したときはこの交換の特例の規定の適用があるものとされます。


(6)譲渡所得の計算


交換の特例を適用した場合における交換差金等を取得した場合についての譲渡所得の金額の計算は、次の算式によります。


交換差金等の金額−{(交換譲渡資産の取得費+譲渡経費)×

      交換差金等の金額
───────────────────  =譲渡所得金額
交換取得資産の時価+交換差金等の金額

 

(7)交換取得資産の取得費の計算


交換の特例を適用し、譲渡がなかったものとみなされた部分については、交換譲渡資産の取得費がそのまま交換取得資産に引き継がれることになります。
この計算は次の算式によって行います(所令168)。

@交換取得資産とともに交換差金等を取得した場合


(交換譲渡資産の取得費+譲渡経費)×交換取得資産の時価
───────────────────────────
      交換取得資産の時価+交換差金等の金額

+交換取得資産の取得に要した経費=交換取得資産の取得費

A交換譲渡資産とともに交換差金等の交付をして交換取得資産を取得した場合

交換譲渡資産の取得費+譲渡経費+交付した交換差金等の金額

 +交換取得資産の取得に要した経費=交換取得資産の取得費

B等価交換の場合
交換譲渡資産の取得費+譲渡経費+交換取得資産の取得に要した経費=交換取得資産の取得費

(8)申告手続


この交換の特例の適用を受けるためには、交換のあった年分の確定申告書にこの特例を適用する旨を記載し、次の事項を記載した譲渡所得の内訳書(計算明細書)を添付のうえ、所轄税務署長に提出しなければなりません。


@交換譲渡資産と交換取得資産の種類、数量、用途及びその価額
A交換の相手方の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地
B交換の年月日
C交換譲渡資産及び交換取得資産の取得年月日
Dその他参考となるべき事項

 

14.譲渡損の取扱い


平成16年1月1日以後行う土地等、建物等の譲渡について生じた長期譲渡所得の損失金額又は短期譲渡所得の損失金額は、原則として、@土地等建物等の譲渡による所得以外の所得と通算すること及びA翌年以降へ繰越することができなくなりました。したがって、土地等、建物等の譲渡損失が大きくて、他の土地等、建物等の譲渡所得と通算してもしきれない場合には、その損失は切捨てとなってしまいます。

(例)
・A土地にかかる譲渡損失  △3,000万円
・B土地にかかる譲渡益    1,000万円
────────────────────
  差し引き     ーーーー △2,000万円・・・切捨て